動きだした地球シミュレーター 世界一のスーパーコンピュータ使用の地球環境予測システム 地球温暖化による気温上昇や二酸化炭素排出問題など、日々の生活の中で地球環境の話題が毎日のように取り上げられ、地球環境への意識が高まりつつある昨今だが、今年(2002年)3月から神奈川県横浜市にある海洋科学技術センター横浜研究所において世界最速のスーパーコンピュータを使用した地球環境の予測シミュレーションシステム「地球シミュレーター」が運用を開始した。7月からは外部機関による研究の利用も始まり、今後の成果が期待される。 「地球温暖化現象により10年後には気温は何度上昇するのか?」「異常気象は将来にわたっても続くのだろうか?」など、普段の生活の中でも話題に上ることが多い地球規模の環境の変化や異常気象などについては、その予測・解明の必要性が強く求められているが、海洋科学技術センターに設置された「地球シミュレーションセンター」(神奈川県横浜市)では、今年(2002年)3月から世界最速のスーパーコンピュータを用いた地球の大気・海洋の予測シミュレーションシステム「地球シミュレーター」の運用を開始。予測や解明の研究に役立てようとしている。
世界一のスーパーコンピュータ 「地球シミュレーター」は、1997年に科学技術庁(現・文部科学省)より開始された地球環境の変動現象の解明・予測を目標とする地球シミュレータ計画の一環で、その一翼を担う超高速並列計算機システムとして建設された大規模スーパーコンピュータシステム。 高速ネットワーク(データ転送速度12.3ギガバイト/秒)で640台ものスーパーコンピュータを接続したもので、1996年当時のスーパーコンピュータの約1000倍の処理速度での超高速数値シミュレーションを目標につくられた。4月には実測性能、35.61テラフロップス(TFLOPS)という世界最高の演算性能を達成している。ちなみに、世界第2位は米国ASCI Whiteシステムの7.226テラフロップスで、「地球シミュレータ」の約1/5というからその高性能ぶりがうかがえる。
スパコン上に「仮想地球」を再現
「地球環境」というあまりにも時間的かつ空間的にスケールの大きい研究対象においては、地球上でおこる現象(たとえば地球温暖化)を実験で再現するのは極めて困難であり、よって、地球上の諸現象をコンピュータ上でシミュレーション(再現)することがもっとも有効な研究手法だという。大気・海洋のシミュレーションにおいては、大気と海洋を格子に区切り、各格子について温度、流れの向き・速さなどの物理量を計算する仕組みになっており、格子が細かいほど精度の高いシミュレーションが得られる。そのため計算に時間がかかることになり、世界最速の性能を誇るスーパーコンピュータが求められたわけである。運用開始により以前に比べより詳細な擬似地球環境のシミュレーションが可能となった。 計画では、地球規模の気候変動の解明と予測および地層・地殻変動メカニズムの解明を主眼としており、気候変動については、気象災害の発生予測 、エルニーニョの発生予測、地球温暖化の機構解明と影響予測、1kmメッシュ気象学の確立などを謳っている。また、地層・地殻変動メカニズムについては、超長期に亘る地殻変動の解明、地震の発生メカニズムの解明、地層中の地下水や物質の移行などの研究を行うとしている。 また、大学や研究所など外部機関の研究利用も7月から開始され、公募により選定された27件の研究利用がはじまっている。 昨今のエコブーム(?)や深刻な地球温暖化、異常気象などにより、人類の暮らしは、地球環境の変化により大きな影響を受ける一方、その地球環境に対して少なからず影響を及ぼしているということが一般に広く認識されはじめている。異常気象により冷夏や干ばつなどの影響を受ける一方で、化石燃料の燃焼や森林伐採などによって地球温暖化という影響を招いており、これら地球規模で生じる様々な問題に対して、早急な対応が求められているのはいうまでもない。そのためには、これらの地球規模の変動の解明、そして、将来の変動の的確な予測(地球変動予測)が極めて重要になってくる。「地球シミュレーター」で得られる研究成果への期待は大きい。 |
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